皆様方の大切な子どもさんをお預かりするにあたって、子どもについての私どもスタッフの考え方を簡単にご説明いたします。
私どもは次のようなことを意識しながら保育をさせていただきます。
まず、「子どもは自分で育とうとしている」という考えにたってゆきたいと思います。
子どもは、その能力は未発達ですから何をやっても大人にはとてもかないません。
しかしそれは能力がないからではなく、これから萌芽させようと子ども自身が頑張っています。
大人の目ではどうでもよいもの、汚いものなどにも興味を持ちます。
好奇心は大人よりもはるかに強いものですが、これは自分を伸ばそうとしていることとして理解したいものです。
大人としてはこうした子どもの「育とうとする力」を邪魔しないように努めたいものです。
さて、「育とうとする力」を後押しする上で当クラブでは次のようなことを意識しながら子どもたちと接してゆきたいと思います。
人間は基本的には群をつくって生きる動物です。
その中で協力し合って生きるものですから、自ずと他者との人間関係をうまくして行かないと自分が困ることになります。
そのためには自分の好みや損得だけを主張していてはダメで、相手のことを考えなければなりません。
そういう人間関係の基本は幼少期での遊びの中で育まれます。
できるだけ多くの友達と関わり合いを持ち、共同生活をすることが重要です。
時には協力し合って遊び道具をつくったり、遊びのルールを決めたり、また時には喧嘩したり、また友達の喧嘩を仲裁したりといったことは社会人としての基本的な訓練ともなります。
母親と2人だけで過ごすのは、子どもにとってはわがままを聞いてくれて過ごしやすい一面もあるかと思いますが、子どもにとっては親の言うことは絶対ですので、家庭では、常に親が上で子どもが下という一方的な力関係が出来上がっています。
親子というのは対等の立場で関わり合う友達関係とはまったく質の違う世界ですので、いくら頑張っても親は友達の役割を果たすことはできません。
つまり親には群の機能はないのです。
近年は一人っ子も多い時代ですので兄弟のいない子どもが多いかと思います。
努めて子どもを群のなかに入れることも大切かと思います。
学童保育では学年の違う子どもが集います。
これは学校とも違った人間関係の場でもあります。
大切な子どもですから両親は子どもにいろいろな理想像を描くのは自然のことかと思います。
しかし、子どもが中学生や高校生になって、親が描いた理想とはまったく違ってしまうケースはよくあることです。
それには両親のもつ理想と育て方とが食い違ってしまって、そのことに気づかないケースが多いのではないでしょうか。
例えば「心の穏やかな人間になってもらいたい」と思っても、子どもの前で夫婦喧嘩ばかりしていたり、場合によってはDVをくり返したりしたら、そういう環境に育つ子どもは心穏やかに育つわけがありません。
絶えず緊張とストレスを強いられて、家庭が安心できる場所ではなくなります。
心の穏やかな人間に育てようと思うのであれば、両親自身が常に心穏やかな状態でいることが必要ではないでしょうか。
そういう環境であってこそ子どもも心穏やかに育つものと考えます。
両親の関心はつい子どもの学習力に注意が偏りがちです。
それは子どもの将来を思ってのことで、それも愛情の表れと言えるでしょう。
確かに学習や生活習慣も大切なことですが、なによりも生きる力が重要と考えます。
能力があってもそれが十分に発揮されなければ可哀想です。
そのためには自分を信じて自信を持って生きて行く力が必要です。
自分を信じる力を自己肯定感と言いますが、日本の子どもの自己肯定感は諸外国に比べて非常に低いとされています。
私どもは自己肯定感を高めることが子どもの生きる力を培うことになるものと考えます。
自己肯定感の高い子どもはちょっとしたことでは折れません。
転んでも立ち上がって前に進みます。
逆に自己肯定感の低い子どもはちょっとしたことで自信を失い希望を持って生きて行くことができなくなります。
近年、中学生がいじめを受けて自殺するという痛ましいニュースが紙面をにぎわすことがしばしばあります。
もちろん、いじめた側が悪いに決まっているのですが、大人の感覚では「そんなことで死ななくてもいいのに」と思われるようなこともあります。
自己肯定感の高い子どもであればそこまで心に傷を負うことはないでしょう。
ところが自己肯定感の低い子は「どうせ自分はダメなんだ」「自分はいなくてもいい人間なんだ」といった自分を否定してしまいます。
子どもの自己肯定感を高めるためには子どもを褒めること、否定しないことが大切です。
コメディアンの欽ちゃんこと萩原欽一さんはこんなことを言っていました。
子どもの頃に学校の成績が悪く、ある時、成績表を見せると父親に叱られると思っていたそうです。成績は250人中210番だったそうです。
その成績を見たお父さんが「下にまだ40人もいるじゃないか」と言ったそうです。
欽一少年は、お父さんのその一言で自信を持ち、それから勉強を頑張るようになって成績も上位になっていったということです。
その時に欽一少年の心には自分を肯定して、前向きに頑張る力が湧き起こったのではないでしょうか。
もしここで「なんだこの成績は!」と叱られていたら欽一少年は自己否定に陥ってしまい、自分に自信を持つことができなかったことでしょうし、その後の生き方も変わっていたかもしれません。
子どもに限らないことですが人間にとって肯定的に捉える自分感は生きる力の源泉ともなります。
そしてまた自己肯定感を培うために学童期は大切な時期でもあります。